楽しみな未来を感じさせる出来栄えではありますが……。
今夏のビッグイベントは、Windows 10へのアップグレード祭りだったという人は少なくないかもしれませんよね。Windows 7や8.1からは無償でアップグレードできるとだけあって、手持ちのPCを次々とWindows 10にしてしまったというユーザーも多いのでは?
そして2015年もあと1カ月を切るというこのタイミングで、スマートフォン向けのWindows 10 Mobileの正式リリースが実施されます。Windows Phoneに関しては、これまであまりよいイメージがなかったものの、デスクトップでもモバイルでも、同じようなユーザーエクスペリエンスを実現するとされる、新しいWindows 10 Phoneには期待しているという声が高まってきているようですよ。以下は米GizmodoのMario Aguilar記者によるレビューです。
***マイクロソフトが、Windows 10のために一から作り上げたという新スマートフォンの「Lumia 950」を借りることができたので、初のWindows 10 Phoneのレビューをお送りいたしましょう。
5.2インチサイズのLumia 950は、64ビットのSnapdragon 808プロセッサーを搭載し、32GBのストレージを内蔵。よりビッグサイズの「Lumia 950 XL」と並んで、ノキアからスマートフォン事業を買収して以来、マイクロソフトから出される、もっともハイスペックなスマホに位置づけられます。今度こそ、iPhoneやAndroidスマートフォンと互角に戦える製品群にすべく、マイクロソフトの意気込みが感じられるモデルに仕上がっていますよ。
Lumia 950を使っていると、珍しいスマホなので、周囲の人々が興味を示してきます。iPhoneでもAndroidスマートフォンでもないモデルを使うならば、なんとなく注目の的になれる優越感に浸れてしまうのはよいことかも~。
ただし、今回のレビューには、マットホワイトカラーのLumia 950をお借りしたのですが、興味を示してきた人に手渡してみると、残念ながら、見た目より劣るチープな仕上がりが不評で、自分もこれがほしいという感想は聞かれませんでした。ノキアが出していた、過去のLumiaシリーズには、美しいデザインが評価されていたモデルも少なくありません。その流れを受け継ぎつつ、ハイスペックのWindows 10 Phoneを発売するのであれば、もうちょっとデザインにも気を遣ってほしかったというのが正直な感想でしょうか。
Lumia 950は、角ばってゴツゴツしたデザインです。バックカバーはプラスチック製で、デザイン的にはいただけません。ただし、最近はバッテリーを取り外せないスマートフォンが増えてきているなかで、バックカバーを外せば、3,000mAhのバッテリーは交換可能なのが、うれしいポイントですね。
ちなみにカメラレンズはシルバーリングのデザインに囲われていて、プラスチックカバーから目立つ形で飛び出しています。まるでロボットの目みたいで、個人的にはかっこいいと感じました。WQHD解像度に、564PPIというディスプレイ性能も、明るくて見やすいスマホだと好印象でしたよ。
Lumia 950のみで生きていけるか? 1週間使ってみた感想は、イエスです。昔はWindows Phoneといえば、使えないスマホの代名詞みたいな仕上がりでした。でも、各種設定も通知も大幅に改良され、こんなスマホは使えないと不満を口にする回数は、ずいぶん減ったと思いますよ。
これまでWindows Phoneが苦戦してきた要因は、アプリがそろわなかったことに尽きるでしょう。そこで、マイクロソフトは、より多くの開発者に対応アプリを提供してもらうため、デスクトップでもモバイルでも同じアプリを使える「ユニバーサルアプリ」をWindows 10で実現。方向性としては、すばらしいアプローチではないかと感じています。
ただし、まだWindows 10の正式リリースから間もないこともあってか、肝心のユニバーサルアプリのラインナップは充実していません。Spotify、Twitter、Netflix、Fitbitのユニバーサルアプリは登場しており、SlackやInstagramなどもベータ版を利用可能。でも、決して十分とは評せません。グーグルの純正アプリがないのを残念がる人は多いかもしれませんよね。
ただし、スマートフォンの基本的な機能は備わっており、日常的な使用で困ることはないレベルになっています。気になったのは、そもそもWindows 10 Mobileの完成度が、まだ不十分かもしれないこと。アプリのクラッシュは多々ありますし、アプリの起動に時間もかかります。あとバッテリーの持ちが悪く、1日ずっと充電なしで過ごせるレベルにはありません。だから、バッテリーを交換できる仕様になっているのかな?
Windows 10 Phoneの大きな魅力は、テレビやモニター画面につなぐと、まるでデスクトップPCのように使える「Continuum」機能の実装です。マイクロソフトは、オプションで99ドルの「Display Dock」を用意し、ここにWindows 10 Phoneをセットするだけで、手元のスマートフォンがデスクトップPCへと早変わり! あるいは、サードパーティー製のドングルを使用すれば、ワイヤレスでテレビやモニター画面と接続することも可能ですよ。
これはもう、ノートPCを家に置いておいて、Windows 10 Phoneさえ持ち歩けば、パソコンいらずになる? ちょっと期待していたのですが、そもそもLumia 950のスペックが、とてもデスクトップPCには程遠いので、思ったほどスムーズには使えません。あとユニバーサルアプリが少ないので、たとえContinuumでデスクトップモードに切り替わっても、あまり意義ある使用法を見出せませんでした。ソリティアなら遊び倒せますけどね……。これでパソコンがいらなくなるくらいの完成度は、やはり期待しすぎのようです。今後が楽しみな機能ではありますが。
ノキアのスマートフォンには、美しい「PureView」カメラが搭載されており、このカメラのためだけにでも、Lumiaシリーズを使い続けるというファンがいたほどです。Lumia 950にも、20メガピクセルのPureViewカメラが装備され、見事なショットを届けてくれそうですよ!
百聞は一見にしかず。これはLumia 950で撮影した写真です。何度も撮り直さなくても、大抵はファーストショットで満足な写真が撮れるでしょう。標準のカメラアプリの各種設定コントロールは、非常に優れていると感じました。フラッシュを当てて撮った写真は、スライダーをコントロールすると、どのくらいの光を当てたいかを自由に選べるのもすばらしいですね。
シャープなショットが撮れるのはよいですが、残念なのは、独立して備わるカメラボタンの反応が、あまりよくないこと。カメラアプリの起動にも時間がかかり、写真を撮りたい瞬間に、タイミングを逃さず撮影するといった使い方は苦手かもしれません。これ以外は、カメラそのものに及第点を与えたい出来栄えなので、なんとか改善してほしいところですよね。
あるいは、Windows 10 Phoneは買いかという問いにしてもよいでしょう。スマホの基本性能はクリアーされています。このカメラのためだけにでも、Lumia 950なら使いたいという人がいるかもしれません。Windows 8 Phoneの時代とは、比べ物にならない満足感をもたらしてくれるはずです。Cortanaの性能も格段にアップしましたよ。
でも、わざわざ高いお金を払って、iPhoneやAndroidスマートフォンから乗り換える価値があるのかな? 残念ながら、この問いにイエスの答えを見出せなかったので、1週間のレビューが終わった途端、僕は愛機の「Nexus 6P」に戻りました。そして、正直な感想は、わざわざ苦労してまで、Windows 10 Phoneを使わないといけない理由が見つからない。これに尽きると思います。
***デスクトップでもモバイルでも同じ環境を用意するユニバーサルアプリはすばらしいです。スマホがデスクトップPCに切り替わるContinuumだって、未来を感じさせてくれるでしょう。きっと今後は楽しみなはず~。
ただし、現段階では、まだ残念な気持ちばかりが残る1週間だったようですね。Windows 10 Mobileそのものの改良や、デザイン面での配慮もリクエストしたいところでしょうか。
Mario Aguilar - Gizmodo US[原文]
(湯木進悟)