米ラスベガスで開催されたCES 2020のLenovoの展示会場に、Motorola製のAndroidスマートフォン「razr(レーザー)」が出展されていた。折り曲げられる有機ELディスプレイを搭載したフォルダブル端末で、世界的な大ヒットを記録したフィーチャーフォン「RAZR」のデザインを受け継ぐモデルだ。
razrは、2018年11月にLenovoグループが北京で開催したイベントで発表された。米Verizonから今月発売予定(予約が殺到し、発売日を延期したそうだ)。なお、日本での発売は未定だ。
LenovoはCES 2020を機に発表した新製品が多く、razrは展示会場での主役ではなかった。しかし、世界から集まった取材陣は、razrを手にして懐かしがったり、楽しそうに折り曲げたり、開いたり……。関心の高さをうかがえた。
筆者は、2006年12月にNTTドコモが発売した「RAZR(M702iS)」を使っていた。その使用感は半ば忘れかけているが、約13年ぶりに進化したrazrに触れたインプレッションを述べたい。
razrを手にした第一印象は「小さい」ということ。筆者がこれまでに触れたフォルダブル端末は、Samsung Electronicsの「Galaxy Fold」や、Huaweiの「HUAWEI Mate X」(日本未発売)など、標準的なスマホよりも大きく、開くと大画面を利用できることをセールスポイントとしている。一方、razrはかつてのRAZRと同等のサイズ感。折りたたみ時は手のひらに収まるほどコンパクトになる。
折りたたむと、こんなにコンパクト開くと、縦横比21:9の6.2型の大画面を利用できる6.2型の有機ELディスプレイは、縦横比が21:9で、かつて主流だった“折りたたみケータイ”と同じように、縦方向にピタッと閉じて、パカッと開ける。実際の開閉操作において、ディスプレイを折り曲げているという感覚はしない。本体の重さは約205gだが、薄いためか、重くは感じなかった。
折りたたみ時の左側面右側面に電源キーとボリュームキーを搭載途中まで開いた状態開いた状態の側面。最薄部は6.9mm背面は、下部分にメッシュ状の表面加工が施され、指紋が付着しにくいヒンジ部は隙間が目立たないほどピタッと折りたためるが、ディスプレイは鋭角には曲がらず、曲線を維持してヒンジ部に収まる構造が採用されているオープン時は、標準的なスマホと同じように操作可能。Motorolaの「moto」シリーズのスマホと同じように、AndroidのベーシックなUI(ユーザーインタフェース)が採用されている。なお、クイック設定パネルに「レトロモード」という項目があり、これをオンにすると、フィーチャーフォンのRAZRさながらの画面に切り替えられるという遊びが盛り込まれていた。
「レトロモード」に設定して「電話」アプリを使った場合。ただし、「レトロモード」が有効になる画面は限定的で、多くのアプリでは通常の画面表示になるケータイ風のメニュー画面も現れる21:9の画面は、もちろん横画面で利用することもできる。画面下の指紋センサー搭載部がグリップとなり、横向きでも持ちやすく、ゲームや動画視聴にも適しているかもしれない。画面を2分割して、2つのアプリを同時に使う「マルチウィンドウ」も使いやすそうだ。
横向きにすると、ゲームや映画をワイドな画面で楽しめる折りたたみ時には、小さいディスプレイで通知などの情報を確認できる。「Interactive Quick View Display」と呼ぶそうだが、RAZRに搭載されていたサブディスプレイよりも大きく、視認性が向上したことは言うまでもない。
RAZRはヒンジ部にカメラを搭載し、サブディスプレイの下にMotorolaのロゴマークがデザインされていた。一方、「razr」はQuick View Displayの下にカメラを搭載。有効画素数は1600万画素で、夜景撮影にも強いカメラとのことだが、閉じたままでも、このカメラでセルフィーが撮れることが利点。さらに500万画素のインカメラもあり、開いた状態でも自撮りができる。
これはQuick View Displayにデモ映像が表示されている状態だが、この画像のように、閉じたままでセルフィーを撮ることができるフォルダブル端末は、開くと大きな画面を利用できることから「スマホとタブレットの1台2役」というメリットを訴求するモデルが主流だ。しかし、razrはあくまでもスマホで、持ち歩くときにコンパクトにでき、ポケットにも収めやすいことが特徴だ。RAZRがそうであったように、ケースに入れずに、そのまま使うのが理想だろう。片手で持ったときの安定感がいいので、片手で操作することが多い人にも適しているだろう。
強いて弱点を挙げるとしたら、片手では開閉しにくいことだ。RAZRにも、ワンタッチで開閉できる機能はなかったと記憶しているが、使い慣れると、ディスプレイ部を上に押し上げるような感覚で、サッと開けたと記憶している。razrは折り曲がるディスプレイを搭載していることもあり、耐久性が保証されているとはいえ、手荒な扱いは避けたい。片手で安全にスムーズに開閉できる手段があれば、なおいいと思ったのが本音だ。
なお、今回Verizonから発売されるrazrは4Gモデルで、5Gには対応していないとのこと。今後、5Gモデルがリリースされることも期待したい。機能うんぬんの話はさておき、純粋にカッコいい! というのがrazrの魅力。日本での発売を期待したい。