MSIの「MEG Z690 UNIFY」は、同社の“光らないハイエンドマザー”として定番になっている“UNIFY”シリーズの最新モデル。最大の特徴は超堅牢設計の電源回路。19+2フェーズとZ690マザーボードとして最大クラスの数を持ち、MOSFETも105AのSmart Power Stageと大出力に対応する。さらに、フェーズダブラーを使わないダイレクト駆動で応答性や電力効率にも優れている。
大規模な電源回路だけに冷却も強力だ。ファンこそ搭載していないがヒートパイプ付きの大型ヒートシンクを採用し、それを7W/mKとかなり高い熱伝導率のサーマルパッドで挟み、電源回路の熱を効率よく伝えて分散する仕組となっている。さらに、裏面にも放熱用のアルミ製バックプレートを搭載。このバックプレートは剛性を高める役割があるほか、裏面にあるハンダの出っ張りが指に刺さらなくなるため非常に持ちやすい、というメリットも。
電源回路は19+2フェーズのダイレクト駆動。Z590 UNIFYは16+2+1フェーズでフェーズダブラー駆動だったので、かなり強化された電源回路はヒートパイプ付きの大型ヒートシンクを備える。サーマルパッドには熱伝導率7W/mKと強力なものを採用PWMコントローラはルネサスの「RAA229131」。Z690の上位モデルでは定番MOSFETはルネサスの「RAA22010540」。105AのSmart Power Stageだこれだけの電源回路となれば、MTP 241WのCore i9-12900Kをフル稼働させたときの温度や安定度が気になるというもの。早速試して見たい。検証環境は以下のとおりだ。
CPU | Intel Core i9-12900K(8P+8Eコア24スレッド) |
メモリ | Kingston FURY Beast DDR5 KF552C40BBK2-32(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
SSD | M.2 NVMe SSD[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB] |
ビデオカード | MSI GeForce RTX 3070 VENTUS 2X OC(NVIDIA GeForce RTX 3070) |
CPUクーラー | MSI MEG CORELIQUID S360(簡易水冷、36cmクラス) |
電源 | 1000W ATX電源(1,000W、80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro 64bit版 |
パワーリミットは実質無制限(4,096W)、DDR5はXMPプロファイルを読み込んでDDR5-5200駆動、簡易水冷のファン設定はMSI Centerアプリで「Game Mode」にそれぞれ設定した。「CINEBENCH R23」のMulti Coreテスト、「OCCT 9.1.4」のCPUテスト(テストモード:通常、負荷タイプ:一定)、「サイバーパンク2077」(4K、画質“レイトレーシング:ウルトラ”、DLSS“バランス”)をそれぞれ10分間実行したときの、CPU温度、VRM(電源回路)温度、Pコアの実行クロック、CPUの消費電力の目安となるCPU Package Powerをチェックする。
それぞれの確認にはハードウェア情報を表示できるアプリ「HWiNFO64」を使用し、CPU温度は「CPU Package」、VRM温度は「MOS」、Pコアの実行クロックは「P-core 4 T1 Effective Clock」、CPU Package Powerは同じ名称の「CPU Package Power」という項目を追った結果だ。室温は22℃。
ベンチ実行中のCPU温度の推移ベンチ実行中のVRM温度の推移CINEBENCH R23はCore i9-12900Kに最大級の負荷をかけるテストだ。CPUの使用率を全コア100%にするという強烈な負荷をかけるストレステストアプリのOCCTよりも圧倒的にCPU温度が高いことからもそれを物語っている。CINEBENCH R23時でCPU温度が最大90℃は高いように見えるが、このCPUを使う上では優秀な部類だ。
さらに注目はVRM温度だろう。CINEBENCH R23実行時でも最大50度と非常に低い。サイバーパンク2077実行時にいたっては43℃までしか上がらなかった。今回使用したCPUクーラーのMSI MEG CORELIQUID S360は、水冷ヘッド部に6cmファンを搭載しており、CPUソケット周辺にも風を送る仕様である点も奏功しているようだが、高負荷でもこれだけ温度が低いのは驚きだ。
ベンチ実行中のPコアの実行クロックの推移Pコアの実行クロックを見ていこう。サイバーパンク2077はゲームの状況に合わせて細かく変化するので参考程度にしてほしい。CINEBENCH R23とOCCTは高負荷な状態が続いてもほぼクロックにブレはない。あっても1MHz前後と非常に安定している。CINEBENCH R23でクロックが下がる箇所があるのは、テストの合間に処理が一瞬なくなるタイミングがあるためだ。これならば、CGレンダリングや動画のエンコードなどCPU負荷が続く作業を行なってもCore i9-12900Kの性能をバッチリと維持し続けてくれるだろう。
ベンチ実行中のCPU Package Powerの推移さらに、CPU Package Powerにも注目しておこう。一番負荷の大きいCINEBENCH R23がもっとも消費電力が高くなるのは当たり前ではあるが、最大でも235W程度とCore i9-12900KのMTPである241Wに届いていない。パワーリミット無制限なので、241W以上で駆動できるハズで、ほかのマザーボードでは250Wを超えることもあるテストだ。詳細なスコアは後述するが、実際CINEBENCH R23のスコアはCore i9-12900Kとして十分優秀なものだったことから、これは、CPUのパワーを引き出せていないのではなく、241W以下のCPU Package PowerでCore i9-12900Kの性能を十分に引き出せていると見るのが正しいだろう。
Core i9-12900Kをフル稼働させても余力があるということは、それだけOCできる余地もあるということ。これだけでも、OC好きにオススメできるというものだ(もちろんOCは自己責任とはなるが)。
そのほかの部分もチェックしていこう。PCI Express x16スロットはどちらもCPU直結のPCI Express 5.0対応だ。分割動作に対応し、1基だけ使う場合はx16動作、2基使う場合は両方がx8動作となる。SLIとCrossFireXのマルチGPU動作もサポートする。このほか、チップセット経由で接続されたPCI Express 3.0 x4スロットも搭載する。
x16スロットは両方PCI Express 5.0対応。x16/ーまたはx8/x8で動作M.2スロットは5基も備えている。そのうち4基はPCI Express 4.0 x4対応と高速なストレージ環境を構築が可能だ(のこり1基は3.0 x4)。さらに、すべてのM.2スロットにヒートシンクを搭載し、サーマルパッドも全部両面仕様と冷却面も万全だ。
M.2スロットは5基も搭載。そのう4基は4.0 x4対応、1基は3.0 x4対応だすべてのM.2スロットにヒートシンクを搭載。サーマルパッドはM.2 SSDの両面に付くと冷却は万全メモリはDDR5対応で、シングルランクが2枚ならDDR5-6666までサポート。対応メモリのリストにはDDR5-6666の製品もすでに掲載されており、今後高速なメモリを使ってみたい人にもピッタリと言えるだろう。
対応メモリはDDR5。XMPプロファイルを読み込んでのDDR5-5200設定でもあっさり動作。高クロックメモリを狙う人にもオススメだそのほかのインターフェースもチェックしておこう。バックパネルカバーは組み込み済みで、バックパネルのUSBは、USB 3.2 Gen 2x2(Type-C)が1ポート、USB 3.2 Gen 2が7ポート、USB 2.0が2ポートを装備。映像出力は用意されていないので、内蔵GPUを使いたい人は注意しておきたい。
ネットワーク機能は、有線LANがIntel I225Vの2.5G LANが2基、無線LANはIntel AX211によるWi-Fi 6(IEEE802.11ax)対応だ。5GHz(160MHz)で最大2.4Gbpsの通信が可能となっている。Bluetooth 5.2もサポート。
バックパネルカバーは一体型のタイプ無線LANはIntel AX211を搭載。大きめのアンテナも付属するPCケースのUSBポート用として、USBピンヘッダで、USB 3.2 Gen2x2 Type-Cが1ポート分、USB 3.2 Gen 1が4ポート分、USB 2.0が4ポート分が用意されている。とがった電源部に目が行くマザーだが、一般的な用途に必要な拡張性も行き届いており、“普段使いにも万能なハイエンド”という装いになっている。
マザーボード上には電源ボタンやリセットボタンも備えるオーディオコーデックはZ590世代から定番になった「Realtek ALC4080」。バックパネルにはS/P DIF出力も備えるなお、Windows 11のインストール時に注意したいのは、標準で対応しているハズの有線LAN(Intel I225V)のドライバーが自動でインストールされないこと(無線LANのIntel AX211はそもそもWindows 11の標準ドライバに含まれていない)。Windows 11 Homeはインストールにネット接続が必須なので、事前に別のPCを使ってWebからドライバをダウンロードしてUSBメモリに入れ、OSインストール時に読み込ませるか、標準ドライバで動作するネットワーク機器(USB接続の無線LAN子機など)を用意しておく必要がある点は注意したい。