秀逸の操縦性と快適な車内を備え、ドライバーズカーとして評価されたフォルクスワーゲン・コラード。高めだった新車価格の影響で希少なこともあり、クラシックカーになりつつある今、堅調に支持を集めている。
カルマン社によるボディも魅力的。だが、より価値を求めるならスペックは重要。2.0 8Vの0-97km/h加速は11.5秒だが、VR6なら6.4秒でこなせる。小さな違いではない。コラード・ライフを始める前に、自身の求める内容を明確にした方が良いだろう。
VR6に搭載された自然吸気のV6エンジンは、4気筒エンジンと同じ長さに、6気筒を見事に集約。Vバンク角は15度と狭く、シリンダーヘッド1つで両バンクをカバーした。
フォルクスワーゲンはVR6の増えた重量を受け止めるべく、サスペンションに手を加え、ワイドな扁平タイヤを履かせた。その結果は素晴らしく、1992年のAUTOCARでは、これまで生産されてきた量産FFモデルで最速だとまとめている。
4気筒のコラードより操縦性も優秀。巨大な中回転域のトルクと、知的なトラクションコントロールが組み合わさり、多くのスポーツカーを追い回せる能力を備えていた。
当時のAUTOCARでは、クラシックとして評価を保つだろうとも予見している。「20年後に史上最高モデルの1台として、コラードがクラシックカー・メディアのトップを飾っても、われわれは驚きません」。と。
V6エンジンのVR6は人気が高い。同時に、4気筒エンジンをスーパーチャージャーで加給したG60も、強い支持を集めるコラードだ。
ボディ・デザインを手掛けたのは、カーデザイナーのハーバート・シェーファー氏。2代目シロッコの後継モデルに当たるが、発売当初は2台が同時に欧州のディーラーへ並んでいた。
プラットフォームは、フォルクスワーゲン・グループのA2。だがVR6ではA3用のサスペンションが組まれ、フロント・トレッドはワイド化されている。外へ出たタイヤを覆うべく、肉付きの良いフェンダーとバンパーも獲得している。
ガラスはボディ面となだらかに組まれ、100km/h以上で立ち上がるアクティブ・リアスポイラーもまとう。25km/h以下になると格納されるが、手動で可変も可能。ミニ・スーパーカーに相応しい装備だ。
コラードも誕生から30年以上が経ち、部品の一部は発見が難しくなりつつある。ボディは亜鉛メッキされているが、長期間放置されてきたような例では、サビも発生しているはず。オーナー好みに改造された例も多い。
これからコラードを探すなら、今まで充分にオーナーの愛情が注がれてきた1台を見つけたい。サンルーフ・ガイドやヒーターマトリックスの交換など、典型的な不具合に対する心構えもしておきたい。
コラードの魅力はなんといってもドライビング体験。上質な乗り心地に機敏な操縦性、爽快な動力性能が組み合わさり、当時の自動車評論家の心をしっかり掴んだ。
ダンパーとブッシュ類の状態維持はとても大切。改造のし過ぎもオススメしない。せっかくの洗練性を、失わせることにもつながりかねない。
オーナーの意見を聞いてみる画像 フォルクスワーゲン・コラードと同時期のゴルフ 後継モデルとなったシロッコも 全49枚